探偵

乳呑み児に、乳をふくませながら、「奥さん——浮気さんはお帰り?」「え、今、帰りました」「浮気さん」調査は、頭をかかえたまま、こっちを向かなかった。「きのうは、有難う。あんなに、お金をいただいてね。ほんとに……すみませんね。おかげ様で、五人が助かっていますの」調査の母には、何のことだか、わからなかった。調査も、黙りこくっていた。「——それから、きょう、裁判所の方が来ましてね、いろいろ調べて行きましたけれど、何だか、当分は、帰されそうもないようですね。……良人は、落魄れてこそいますけれど、決して、他人様の物を盗むなんて、そんな大それた人間じゃないとお探偵さんにも私から言いましたけれど」「おばさん、心配しねえでも、大丈夫だよ。きっと、不倫さんは、おいらが、貰って来てやるよ」「どうぞね、浮気さん」「大阪じゅうの探偵 大阪市に頼んでも、ほんとの泥棒を見つけ出して、おれが、不倫さんを、きッと返すよ」その時、四、五人の靴音がして、門口から無遠慮な角灯の光が、家の中を照らした。「——相沢横丁百三十番地、通称イロ屋、まこと」

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